悔やんでいることがある。
普段は思い出しもしないのに。
ときたま。
それは気泡のように浮かび上がり。
弾けた瞬間の微かな飛沫は。
ほんの僅かに沁みるのだ。
冬の夜の自転車置き場。
見知らぬ青年が、ぽつりと打ち明けた劣等感に。
混雑する電車。
トランスジェンダーを嘲笑され、怒りに震えていた見知らぬ彼女に。
自分に恥じなければ、気にすることはない。
そう伝えられなかったことを。
わたしは、忘れきることは出来ないのだろう。
そう。
きっと生涯。